東南アジアの通信回線て品質が悪いっていうイメージの方多いかもしれませんが、都心であれば、どこの国でもある程度良い環境の国が多いです。
例えばカンボジアなどでも、光ファイバーは普通に入りますし、スピードも速いです。
でも、会社で利用するとなぜか「遅い、よく切れる、繋がったり繋がらなかったりする」何てことないですか?
そんな通信環境に対して、どんな可能性があって、どんな方法が取れるかを元通信キャリアの経験を持ちネットワークエンジニアの経験もある私が解説します。
1.通信品質を決める要素
通信品質を決める要素は、すごく簡単にまとめると以下の4つです。会話で使えるように、英語単語も記載します。
・データ落ち(パケットロス):Packet Loss
・距離(遅延):Delay
・データが付く速さの違い(揺らぎ):Jitter
分かりやすいのは、「速さ」ですね。Mbps(メガ・ビー・ピー・エス)とかGbps(ギガ・ビー・ピー・エス)とかいう数値です。この他に通信を決める要因がいくつかあります。
パケットロスと呼ばれる、通信をしている間に、いつの間にかデータが抜け落ちるという現象や、通信をする距離が単純に遠いため、それだけ遅れが出るということです。
例えば、日本とヨーロッパで電話会議すると、リアルタイムにはやり取りしていなくて、私たちが日本で話した内容が無効に届くのに200ms(0.2秒)~400msくらいかかっています。
さらには、データを「ABCDEFG」と順番に送ると、等間隔に来ればよいのに「ABC_D__EFG」といったデータの間に少し来る感覚がずれる現象が起きます。これが起きる要因については、今回の趣旨から外れるので、また別途解説します。
2.なぜ通信品質が悪くなるのか
そもそもなぜ通信の品質が落ちるのかという点について、大きく分けると以下の5点のため、それぞれについて解説します。
b)社内の通信インフラが整っていない。
c)通信キャリアの設定の問題
d)通信回線種類の影響
e)通信キャリアの局舎設備の問題
a)ユーザー数に対して回線が遅すぎる。
まず初めに、勘違いすることがあるのが、企業向けの高い通信回線を用いているので、「品質が良い」というのが、「速い」に置き換わってしまっているパターンです。
「通信キャリアの高価な月20万円を超えるインターネット回線10Mbpsと月5000円程度で入れる個人向けの月10Mbpsの回線、どちらが早いですか?」と聞かれた場合、答えは「同じ」です。
家庭用は、使う人が増えると遅くなるので、ちょっとだけ極端な言い方をしていますが、でも残念ながら同じなんです。
大事なことはユーザーが何人いて、どのくらいの通信をするかによって設計を変えることです。場所によって速い回線が手に入らない場合は、高速化装置(Network Optimizer)や高速化ソフトウェアが販売されていますので、ITベンダーに相談するとよいと思います。
b)社内の通信インフラが整っていない。
古い事務所にいらっしゃる場合、部屋の隅っこですごい埃をかぶってる通信機器(Network Switch)を見かけることはありませんか?
こういった機器は、10年経っても壊れないので、実は隅で眠っていて皆さんのPCに繋がれていることがあります。通信回線以外も見る箇所があります。
他にもWi-Fiも設定で遅くなったりしますので、注意が必要です。
c)通信キャリアの設定の問題
通信キャリアの設定の問題については、色々な場合があるのですが、通信速度が契約通りに出ていないのに引き渡しをするキャリアもいます。
しっかりと立ち合い時に、隣で必要な早さが出ているのかを目視で確かめましょう。その時は速さだけでなく、遅延の情報も見れると最高です。
例えばSpeedtest.netというサービスがありますので、最低限こういった所で確認してみるのもいいでしょう。
d)通信回線種類の影響
通信回線には様々な種類があります。「インターネット専用線」、「ベストエフォートインターネット回線(一般的なインターネット回線)」、「マイクロウェーブ通信」、「モバイル通信」、「閉域網」などです。
もはや呪文のような単語が並んでいますが、一般的に現地にいて、まず契約するのは「インターネット専用線」か「ベストエフォートインターネット回線」だと思います。ベストエフォートというのは、安いかわりに、最大限努力した成績しか出せませんという回線で、地域の他の顧客と回線が共有されているサービスです。
インターネット専用線はその名の通り、専用のインターネットで通信キャリアから出ていくまでを保証しますというサービスです。難しいのが相手側の早さを保証はできないので、あくまでも自分の拠点から通信キャリアの出口までが専用です。
他の回線もそうですが、種類によって速さや遅延が保証されるかなどが決まります。
e)通信キャリアの局舎設備の問題
インターネットがつながる場合に、何もなしでいきなりどっか地中でインターネットにつながるわけではありません。
近くに局舎設備があり、そこから、キャリアのコアのネットワークに入っていき、他のキャリアとつながっているというのが一般的な構成です。
ここで、通信キャリアの局舎が雨漏りなどをしていると、大雨が降ると止まることや、ネズミがいて、回線を噛み切ってしまうことなどがあります。
突然の通信断はそんなことから起こることもあります。
3.通信品質を良くするために試すべきこと
通信品質を下げてしまう要因をあげましたので、その対処法についても3つ述べます。
b)通信回線種類の多重化
c)社内インフラの見直し
a)通信キャリアの多重化(冗長化)
通信キャリアは1社だけではありません。ほぼ全ての国で通信キャリアは多重化されており、1社だけという事は無いと考えてよいです。
通信キャリアと2つ以上契約することで、彼らの通信網に影響が出ても、もう一方の回線で通信が出来る状況を作れます。
ITベンダーに言ってこれが分からない業者はいないと思いますので、まずはITベンダーに相談してみるとよいと思います。
b)通信回線種類の多重化
通信回線種類の多重化ですが、先ほどと同じ意味の用で少し違います。
1つは「高価な回線と安価な回線を組み合わせる」という事です。
安価な回線は高価な回線と異なり、安いが早いという特性を持っている物も非常に多いです。そこで、普段は安い回線で通常業務をしてもらい、高価な回線は「日本とのやり取り、日々発生する重要な顧客とのファイルのやり取り」など使う通信を分けます。
そうすることで、品質の中で説明した「速さ」を満たしつつ、投資額を抑えた通信インフラ環境を作れます。
c)社内インフラの見直し
通信回線がどんなに良くても、社内インフラが遅いと、その通信回線も活かしきれない上に、社内のサーバーへのアクセスも遅くなります。そこで、社内のインフラでボトルネックが無いか調べましょう。
社内のITに相談するか、ITベンダーに相談するとよいです。
ただ、ITベンダーに相談する場合は、「古いから」という理由で機器を変える必要はありません。「必要な早さが出ないから」という理由で帰ることです。ネットワーク機器を変えても効果が出ないなんてことが無いように、明らかに効果が出るという所から効果的に投資しましょう。
4.まとめ
通信キャリアについて私の経験をもとに解説いたしました。東南アジアのでは地方都市で頑張る製造業や物流のお客様が沢山いて、日々汗水流して頑張って、オフィスに戻ってきたら「通信できない、遅い」なんていう非常にかわいそうな状況を沢山見てきました。
そんな皆さんが少しでもこの情報を参考に、現地のキャリアや再販事業者とうまく付き合っていけたら幸いです。
他にも以下みたいに通信に関する記事を書いてますので、必要に応じて、読んでいただければと思います。
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